第2章 ×柱の人生ーその壱ー
その男は俺を見てすぐに縄をほどいて自由にした。
「小僧、名前は?」
「……ナマエ」
俺は首をかしげた。
「持ってない。」
目の前の二人は顔を見合わせた。
「まあ、身なりで大体のことは察するが…。」
「……何とかしてやれませんか?」
顔が綺麗なやつが俺の顔を覗き込んだ。……近くで見ると本当に綺麗だな、こいつ。
「いいが、何とかしてどうするつもりだ。俺は駆け込み寺はやってないぞ。」
「…でも、このまま帰したら……。」
その時、ピシッとまた頭が痛くなった。
雷が見えた。
でもその雷はより一層輝いていた。
…何だ?
「お前、雷か」
「はあ?」
「たどり着いた、お前、雷だ」
輝く雷は、まるで朝の太陽のように俺に安心をくれた。
「お前、良い。俺は安心、してる。」
「え?えぇ?先生、こいつ何言ってるんですか…?」
「…どうやら言葉もあんまりなようだな。」
「俺、お前、見つけるから来た」
雷を求めて正解だった。爛々と光輝くそれは、とても自分にとって良いものだ。
「お前、えっと、ここにいたいってことか?」
「俺、良い。」
「…だそうです、先生……」
目の前の男は少し悩み、やがて頷いた。
「まあ、当分は良かろう…。」
そうして俺はそこにいられるようになった。
雷はもう見えなくなって、その次にまた頭が痛くなった。
次に見えたのは、ドロッとした赤い何かだった。