第7章 僕だけに見えるもの
木谷優鈴。
それが僕の名前だった。母は鳴り物が好きな人だった。優しい鈴の音色のような、そんな子供になってほしいと願って僕はこの名をつけられた。
僕が産まれたのは不思議な場所だった。お家は代々悪しきものを祓う仕事をしていた。
まず、僕が他の人とは違うんだなと気づいたのは母が小さい時から僕に言い付けていた言葉のせいだった。
『見えていることを気づかれてはいけないあれらはこの世にあらざるものなのだから』
なぜか、見えないものが見えた。
青白い女の人、血だらけの老人、その他もろもろ。
そんな僕が産まれた田舎街では皆不気味がって誰も僕らに近づこうとしなかった。
『あの家は人を食う鬼の仲間だ』
そう囁く声も聞こえた。
鬼。
そんなものいてたまるか。こっちはわけのわからんもんが見えてるのに、そんなもんが見えたらたまらない。
でもいたらいたで困る。
「母さん、僕に鬼の倒し方教えてよ」
皆にこそこそされるのは嫌だったし、多分鬼がいなくなりゃ黙るでしょ。そう思った。
母は止めなかった。僕はすぐに家を出て、鬼に詳しい人を訪ねて回った。
そうして行き着いたのが先生のところだった。先生は物を教えるのが上手だった。あと優しくて、僕が変なものを見えてると言っても優しかった。
そこで僕は、鬼を抹殺することがいかに難しいかを知った。
それでもやってやろうと思った。僕たちに悪口を言う奴らを黙らせるんだ。そうしたら、早くに夫を亡くしていつも苦労をかけた母さんが喜ぶだろう。
育手の元には既に一人弟子がいたので、僕はそいつの弟弟子となった。
呼吸を覚えるのは大変で、一年半かかった。
兄弟子は僕より半年はやく剣士になった。