第4章 旧水柱は仲良くなれないー永遠ー
桜の木の下に、空色の着物を着た幼い女の子が見えた。
誰がいるのかはわかっていた。
「ハルナ」
声を出した。
くるり、と振り向いたハルナ。久しぶりの再会。
妹は僕を見るなり、着物なのにそのまま走り出した。
「兄上ッ!!」
「ハルナァ!!」
飛び込んでくるハルナを、ぎゅっと抱き締めた。
懐かしい温もりに、目頭が熱くなった。
「ごめん、ごめんよぉハルナ、遅くなっちゃったね、ずっと一人にしてごめんね」
ボロボロと涙が溢れた。
泣き虫じゃないはずなのに、泣くなんてみっともない。
「ハルナ、今度は父さんと母さんを待とう。」
「兄上も一緒ですか?」
「うん」
ハルナはにこりと笑った。
「今日はいいことばかりです、兄上。桜も満開になったんですよ!」
桜の木を見上げて言う。
確かに、春真っ盛りで、桜は綺麗に咲き乱れていた。
この子はここで何度桜を見上げたのだろう。
「桜は、永遠」
ポツリと父からの言葉を呟く。ハルナがキョトンとしていた。
「永遠…?」
「桜の咲かない春はないんだよ。」
だから桜は永遠。何度でもよみがえる。
その時、走馬灯のようにかつての仲間たちのことが頭に浮かんだ。
「……何度でも、桜は、咲く。」
じゃあ僕たちは?
何度でも、会えるのだろうか。
「………そうだね。」
うん、と頷く。バカバカしい考えだと、僕はわかっていた。
「また会えるよね」
だって、僕らも永遠だから。
仲良くなれなかったけど、僕らは互いの死を悲しみ、苦しみ、涙した。
「兄上」
ハルナがぎゅっと僕の手を握った。
笑ってそれを握り返した。
またいつか会える。
僕はそう信じる。
どうか、また、彼らに会うその日まで。
僕は、ここで桜を見上げているよ。ずっとそうして、空を見ているよ。
だから、紙飛行機を飛ばしてね。霧雨さん。