第18章 寂しい気持ち
新しい柱が増えると聞いて嬉しいはずでした。
これど、やはり寂しい気持ちが大きい。
桜くんはみんなと親しくする人ではないし、私は嫌われ者だし。
柱が二人しかいないのに私がかけつければ『霞柱だ、逃げろ』『鬼と一緒に殺される』的な感じでみんな逃げ出す。
桜くんがかけつければ『水柱かよ』『何か嫌なこと言われる前に逃げろ』という感じ。結局みんな逃げるのです。
鬼殺隊はバラバラというか、まとまりが皆無になってしまった。
氷雨くんはうまくまとめていた。安城殿は厳しかったけどみんなから好かれていた。
けれど私はあの二人のようにできない。そんななか新しい柱を出迎える…なんて。
「聞いたか?水柱が本部と揉めたって。面と向かってクビにしろって言ったんだってよ。お館様の屋敷にいた隠が耳にしたんだと。」
「霞柱も悪い。あの人はお内儀様に真正面から文句言ったらしいぜ。」
「じゃあ柱が完全に鬼殺隊と決別したってこと?これからどうなるのよ。」
噂話は嫌でも聞こえるし、負の気配を感じる。
でも霞柱である私がいる横でそんなこと話してる隊士もどうかと思う。
…適当にご飯でも食べようと入った定食屋でこんなことを耳にするなんて思いもしなかった。隣の隊士たちは私に気づいてないみたいだし、黙っておこう。
「柱が引退するってのは本当みたいね。」
「あぁ、現在活動してるのは二人だけだろ?炎柱は家に引きこもってるみたいじゃねえか。」
「鬼が増えてるのに…」
「もう鬼殺隊も終わりか。」
私は箸を置いた。まだ完食していないが食欲がまったくなかった。
「じゃああんたら柱になれば?」
そのとき、無遠慮な声が聞こえました。
任務帰りらしい桜くんがそこにいて、怖い顔で彼らをにらんでいました。
「僕ら引退するみたいだし。ねぇ霧雨さん。」
そして私の真正面に腰を下ろして、にやにやと笑いました。…あぁ、確信犯だ。
「えっ…水柱と霞柱!?」
「いや?たった今引退したっぽいんでただの通りすがりですけど?」
桜くんはそれはもう楽しそうだった。