第18章 寂しい気持ち
私は改めてあまね様に向き直った。
「私、寂しい、だったみたいです。でもお館様とお内儀様がお決めになったことだから、反対とかは、ないです。」
ごめんなさい、と頭を下げた。
「霧雨様」
「はい」
「私にはそのお言葉で十分にございます。頭を上げてください。」
恐る恐る顔を見ると、彼女は相変わらず顔色ひとつ変えていなかった。
「……お内儀様、おいくつですか?」
「17でございます」
「………」
…私とそう変わんないのに、なんでそんなに大人っぽいのでしょう。不思議。
「大人っすね…」
桜くんも驚いていたようで感心したように声を出した。
「そんじゃ、わだかまりもとけたみたいだしクソガキは帰りましょっか。」
「私クソガキじゃありません。」
「はいはいはいはいはいはい」
めんどくせぇ、と言いたげな桜くんは私の手を引いて玄関へと向かう。
「ハカナ」
「何すか」
「私はハカナが好きだよ。」
だが、お館様の言葉に足を止めた。
「だから何だし」
桜くんは振り返らずにぶっきらぼうに言った。
「あんたに好かれようが嫌われようがやることは変わらないね。」
その言葉にどんな真意が込められているのかはわかりませんでした。
「まあ、気に食わないならクビにしてよ。」
そうして背を向けてとっとこ歩いていく。つないでいた私の手を離して。
「桜くん待って」
私が戸惑っている間にも桜くんは遠ざかっていった。
「」
「はっはい…あの、桜くん追いかけないと…!」
「近々、新しく柱になる子たちがいる。」
予想外の言葉に目を見開いた。
「とハカナなら今の状況を乗り越えられると信じているよ。」
「…はい。」
私はお二方に頭を下げて桜くんを追いかけた。
門の前で追い付いたが、彼は自信なさげな顔を見せた。
「余計なことを言ったの、僕だね。」
「…いえ。桜くんのおかげで自分の感情に気づけました。」
「……………」
桜くんはフッと笑って、それから走り去っていった。私もいつまでもここにいるわけにはいかないので足早に外へ出た。