第17章 一撃必殺
あんたたちみたいな筋肉ムキムキ男たちにはわからないであろう苦労が、私にはあるのです。
細い細いと言われる筋合いはないですね。
「昔から筋肉がつかない体質でして。あまり頑丈でもないので、頼りないかもしれません。」
私は立ち上がって言った。
「悲鳴嶼くんとか…宇髄くんとか。それこそ不死川くんみたいなこの方が強そうですものね。見た目だけね。」
「…怒ってます?」
「当たり前です。」
私は不死川くんに狙いを定めた。
「私、お返しはします。」
「え」
彼の顎に飛び膝蹴りを喰らわせた。そのまま不死川くんは地面に倒れて動かなくなった。
「…やっぱりあんた、一撃で不死川倒せるんじゃねえか。さっき本気で行くとか言って手を抜いてたな。」
「当たり前です。不死川くんがどう出るか見ていただけですよ。」
宇髄くんは不死川くんを担ぎ、屋敷の中へ運んだ。
「珍しいな。あんたがこんなことするなんて。」
「……」
私はふっと笑った。
「不死川くんは強いです。でも、生き急いでいるかのようにしか思えません。私たちは生きるために強くなるのであり、死ぬために強いのではありません。
柱は前線に立つ機会が増えます。死ぬためではありません。不死川くんは死ぬことをためらわないでしょう。私もそうです。死ぬことは怖くありません。
ですが、死にたくはありません。あなたたちに死んでほしくもないです。」
宇髄くんは不死川くんを寝かせると、外に戻ってきた。彼の聴力なら私の声も聞こえていただろう。
「……あんたのそう言うとこ、俺は嫌いじゃないぜ。」
「それはどうも。」
「まっ、これで不死川も懲りたろ。俺にもあの一撃必殺の技教えろよな。」
「じゃあ、私と二人で稽古しますか。」
私は宇髄くんと二人で不死川くんの屋敷を後にした。
なんでか今日、不死川くんに腹が立ったのです。
そして怒りのままに動いてしまった。
後日、当たり前に私はやり過ぎたど上層部から怒られました。その日、不死川くんが使い物にならなくなったのですから…一歩間違えば隊律違反です。
それから不死川くんは比較的私に突っかかって来なくなりました。下の子のことも少しは考えるようになったとか。
その調子で自分のことも考えるようになってくれれば良いのですが、それは私が言えたことではないですね。