第2章 いつもの通り
都立喜多方高校は、豊島区に位置するまあまあの進学校。因みに、駅から7分。
私の家からはなんと歩いて3分くらいのところにある。すなわちそれはウタくんの家からも3分という意味でもあって。
同じ高校に行くことは知っていたから、自然と一緒に登校することになった。
私たちは高校二年生で、日々満ち足りた高校生活を送っている。
仲の良い友達もいて、授業も楽しくて。ただ、クラスの皆はお付き合いする事が頻繁にあるのに、私には彼氏ができないのが少し悩み。
「ウタくん」
「ん?」
「わたし、お付き合いするのに…向いてないの?」
ウタくんがきょとんとした目でこっちを見る。
「…どうして?」
「だって、好きな人もできないし、みんなは告白したり、されたりがいっぱいあるのに…私は、まだ一回もない」
「はは、そういうことか」
私の悩み事を、軽く笑い飛ばすウタくんを少し恨めしい目で見る。
そりゃ、ウタくんは身長も高くて運動もできて顔も整ってるから、こんなことなんかどうでもいいって思えるかもしれないけど。
明るい茶髪に隠れた左耳には、ピアスがついていることを私は知っている。前に、なにか願掛けをしてるって事は聞いたけど、詳しくは話してくれない。恨めしいほど、よく似合っている。
「俺が近くにいるからかもね」
「え?」
「俺と付き合ってると思われてるのかも」
「まさか!そんなわけない」
どう考えたって釣り合わない。幼なじみなのに、いつも引け目を感じていて、そんな私にも嫌気がさす。ウタくんはいつも私に対等に接してくれてるのに。
「…なんでって聞きたいけどやめとく。ましろは自分の魅力を分かってないから」
「…からかわないで、ウタくん」
「本気なのになー」
会話をしていたら、3分なんてすぐだ。教室の前で、ウタくんに手を振って別れる。
友達に挨拶をして、席について、いつも通りに学校生活を送ろうと思っていたのに。
机の中の違和感に、私は最初首を傾げるだけだった。