• テキストサイズ

ONE PIECE短編集

第2章 嫉妬(トラファルガー・ロー)


にやり、と笑ったのが女に伝わったのだろう。
帽子もなくなって、顔を大幅に覆っていた前髪を含めた髪の毛は風に遊ばれる。
初めて見た、目の前でほほ笑む顔はそれはそれは形容しがたくて。
おもわず女はハッと息をのみ、見惚れた。

綺麗に着飾り、外見に惜しみなく手をかけてきた女だが、それでもとうてい及ばないほどの美を持っていた目の前の人物。
勝ち気にほほ笑む姿も妖しく弧を描く唇も、すべてにおいて負けたと感じざるを負えなかった。

「自惚れでもなんでもない。紛れもない事実。彼は私の所有物 -モノ- よ」

これで満足?と言って女の顔をつかんでいた手を放す。
崩れ落ちた女の姿から、もう終わりか、とため息をついた。
女はとうとう誰も居なくなるまで動けなかった。







「ほんと、オイタが過ぎるよ。わかってるの?ロー」

暗い部屋に入ったら、奥でもぞもぞと動く気配とかたまり。
もちろんこの部屋の主であり、先ほどの面倒事を起こした原因でもあるトラファルガー・ローだ。
ベポと別れた後、文句を言うためにまっすぐここへ来たのだ。
相も変わらずベッドシーツに潜り込んだままのローに近づき、いまだ背を向ける彼の背中をつぅ、とシーツ越しになぞる。

「一応ヤらない、ていう約束はまもっているようだけど、そそのかしたバカ女が乗り込んでこないように最後まで始末して」

最終的に敵視される私の身にもなれ。面倒なんだ。
文句をタラタラ言っている最中でもうんともすんとも言わない。
首筋に手を這わし、そのまま首に手をかける。
かすかに反応したローはやっとこちらを振り返る。

「俺を所有できるのは自分だけ、ねぇ」

笑いを含んだ言い方でにやりとやつは笑う。
こやつ、聞いてたな。
それに無表情で見つめ続け、片手だけで覆っていた首に、もう片方の手も添える。
完全に首を一周回った手に力を入れ、喉の凹凸にかすかに力を込める。

「私に妬かせようったって無駄だよ」

私から離れられないのは解ってるもの。
唇を近付けて耳元で囁く。
反応するようにローの両腕が腰にまわる。

「悪かったよ。あまりにも最近相手にされなかったから暇潰ししてたんだ」

お前がベポとばっかり昼寝するから。
呟いた彼の言葉に可笑しくなって軽く声にだして笑った。
本当にかわいいやつだ。

それは悪かった、と彼女が笑って頬にひとつ、お詫びのキスをした。
/ 72ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp