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ONE PIECE短編集

第2章 嫉妬(トラファルガー・ロー)


「ねぇ、あんたローのなんなの?」

いきなり声をかけられたかと思えば何だ。
ローの何?てお前がなんだよ。
煌びやかな装飾に加えて綺麗に塗られた化粧。
女という女を着飾ったような目の前の女。
そいつに眉間に皺を寄せて思いっきり不機嫌顔を披露してやる。
そうすると相手は勝手に頭に血を上らせてつっかかってくる。

「早く答えなさいよ」

あえて上から目線で命令してくる女を一瞥。
相手にするのも面倒だから、先程までしていたベポとのお昼寝を再開する。
すると、突然降ってくる冷たい液体。
さすがにびっくりして閉じかけていた目を開いた。
横で一緒にいた(いままで寝ていた)ベポも驚いて目をパチクリしている。
ベポかわいいなぁと思いながら、ゆっくりと立ち上がって女を睨む。

「何のつもり?」

なるべく冷たく。
かけられた水よりも冷淡に。

怒気も含まれたそれはとても低い音声となって空気を震わした。
それだけに怖気づいたのか少しだけ相手がたじろく。
だがそれでも気丈に(なふりして)立つ女の姿勢は拍手ものだ。
よく耐えた。

「あんたが何のつもりよ。シカトしてるからこうなるのよ」

手を腰に当てて目くじらを立てる女に笑顔を向ける。

「初めに『ローの何』て聞いてきたよね?」

髪や服や肌をしっとりと濡らす水を軽く払う。
あぁ、このままだと風邪をひくじゃないか。

「どこの誰だか知らないけどさ、」

ゆっくりと女に近づいて、先ほどかけられた水が入っていただろう容器を見る。
ほんと、どこから取り出したのやら。

「勘違いも大概にね?」

トン、と女の持っていた容器を軽く一回叩くと、次にそれを勢いよく払い飛ばす。
唖然としてた女はその衝撃に身体をびくつかせる。
カンッカン、と転がるそれをただ眼で追っている女の顔を、片手でがっちりと掴む。

「ちょ、なに…」
「どうローと接して勘違いしたのか知らないけど」

空いているもう一つの手で被っていた帽子をとる。
もふもふとしたそれは、この女も知っている通りやつの愛用するグッズの一つだ。

「な、ぜそれを・・・」

絶対に誰にも触らせない帽子を、自分が水をぶっかけた女が持つ。
くるくると帽子を軽く回す様子をただ見つめている。

「あのねぇ、あの坊やがどこで誰と何をしようと」
「っ」
「あの子を所有できるのは」

私一人だけ。
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