第11章 ウルトルの涙(トラファルガー・ロー)
目を覚ますと恋人が心配そうにこちらを覗き込んでいた。
彼女を最後に見たのはのはパンクハザードでの宴の最中だった。ガキ達の治療を終えて建物からでてきた俺にお疲れと言ってスープを渡してきた。白猟屋もいた近くの木箱に腰掛けて、飲み物を取ってくると側を離れたのが最後だ。
見聞色で島中を探ろうとも見つからず、目に見えて狼狽える俺に白猟屋がまだ自分達もここに残るから見かけたら声を掛けてやると借りを返すように引き受けてくれたのを頷く他なかった。作戦は進行しているのだ。同盟相手に言い放った通り止まることを許されず、後ろ髪引かれながら麦わら屋の船に乗り込んだ。
「おまっ…どこにいたっ!」
「え?…ロー…」
眉を寄せてさらに心配の色を濃くした表情で頭の怪我に触れるクロエ。その手を掴もうと動かせばじゃらっと鎖が揺れた。
「目が覚めたようだな、ロー」
濡れたタオルを手にして血を拭ってくれるクロエの背後から憎い声がする。もちろんドフラミンゴだ。正面の椅子に腰かけたドフラミンゴは怪しげな笑みでこちらを眺め、クロエ、と呼ぶ。
「なぁに、ドフィ」
衝撃を受けた。共にコラさんに助け出され、志半ばで倒れた彼に代わりドフラミンゴを止めるために13年の月日を掛けてきたクロエが、その男に微笑み愛称で答えた。
驚いて言葉を発せられなくなった俺に気づいたドフラミンゴが笑みを深くする。途端に頭に血が上り唸るように叫んでいた。
「てめぇっ!クロエに何しやがった!」
「ロー?」
叫びに驚いたクロエ がこちらを振り返る。その顔は純粋に声量に驚いているだけで、それがより一層俺の心を搔き乱す。彼女の行動全てがおかしい。