第9章 緩やかにいま墜ちてゆく(トラファルガー・ロー)
「淫乱だなァ?声だけでイけるように調教してやろうか?」
クロエの頭を腕で囲い、少しも離れないようにローに固定される。
覆い被さったまま、ゆっくりと突き上げてくる目の前の男。
この男に触れられれば全てが性感帯のようにゾワゾワとする。
そんな自分をひっぱたいてやりたい。
嫌いな海賊。
無理やり自分の体を暴いていく強姦魔。
嫌い
嫌い
嫌い…
耳元で熱い男の息づかいを感じる。
クロエが感じてナカを締め付ける度吐き出される吐息に、余計に頭がくらくらしてくる。
「ここが気持ちいいか?」
新たに良く反応するポイントを探り当てたローが顔を覗き込みながら聞いてくる。
良いかどうかなんて、繋がっているのだからナカの反応で十分わかるだろう。
意地悪く聞いてくる男の顔をにらみ返した。
「ククッ…そう怒るな」
緩く口角をあげて微笑む顔に、ドクンと心臓が音を立てる。
体が繋がっている状況なのに、場違いなほど幼く笑うその顔から目が離せない。
なんでそんな顔をして笑うのか。
どうして優しく抱くのか。
自分がどんな顔をしているのか分かっているのだろうか。
ただ体の相性が良かった女を偶然見つけたから戯れてるだけではないのか。
所詮海賊。こうして気紛れに襲ってきては、用が終われば捨て置かれるのだろう。
チクリとした胸は、気づかない振りをする。
だって、報われないじゃないか…
「随分と考え込むな…これだけ分かりやすく態度に出してんのに…」
戸惑うようなクロエの表情だけで何を考えてるかわかったローが笑う。
おでこがぶつかり、至近距離で金の瞳がこちらを覗く。
「受け入れがたいか?お前の嫌いな海賊だもんなァ」
そう、こいつは自分の嫌いな海賊。
無法者で、
弱いものを虐げて、
残虐で、
非道で、
…なんで、この男は海賊なのか
なんで愛しそうに名を呼ぶの?
なんで愛しそうに手を取るの?
なんで愛しそうにキスをするの?
なんで愛しそうに抱き締めるの?
なんで…
認めたくない自分の気持ちと、受け入れたくない、気付きたくない男の気持ち。
答えは分かっているのに口に出せずに、戸惑い揺れる瞳を見られたくなくて顔を背けた。