第9章 緩やかにいま墜ちてゆく(トラファルガー・ロー)
震えが治まらないうちに対面座位の姿勢で下から突き上げられる。
ちかちかとする視界はもう何度目かわからない。
とにかく苦しい。そして気持ちが良い。
こんな海賊相手に感じる自分がイヤだが、この男から繰り出される快楽に身体が喜んでしまっている。
このままでは数年前のようになってしまう。
抗いたいがそれを許してくれないローの猛追になす統べなく揺さぶられ続ける。
この細い男のどこにそんな力があるのか、軽々と身体を持ち上げられて好き勝手される。
だがそれが堪らなく気持ちが良い。
まるで恋人のような、甘く抱き込み、丁寧に良い所を探ってくれる。
誘い出され、与えられる快楽に酔い、時折苦しいくらい求められれば堕ちてしまうのも仕方がないのではないだろうか。
この男は本当になにがしたいのか。
たった一度、飲み屋で素性の知らぬ男女が、一夜の快楽を求めて重なった。
ただそれだけの出会いと別れ。そんな光景はそこらに掃いて捨てるほどある。
それなのにこのトラファルガーという男は数年も前の女を求め、追ってきた。
たしかに相性が良いと言われれば頷ける。
彼に抱かれて以降、例え好いた男だったとしてもその男とのセックスがチープに感じてしまうほど。それほど彼から与えられた快楽は自分の身体を変えたのだ。
「あっ…ぁ、」
「っ、…ホントいいな、お前…」
突き上げられながら見下ろせば、濃い隈を携えた目尻を微かに染め、恍惚とした表情で見つめてくる。
(なんて顔してるの…あれじゃぁ…)
"愛しい"と言うような、勘違いしそうになる視線に慌てて目を逸らした。