第6章 プレゼント(ロブ・ルッチ)
「どうしたのかしらね、クロエ」
「さぁ。あ奴が可笑しいのはいつものことじゃ」
任務から帰ったルッチとクロエ。
同じ任務に行ったルッチは何も変わらない。
可笑しいのはクロエ。
彼女はルッチを避けるような、でもチラチラ見る、といった行動を見せ、それにイラついたルッチが無理やり視線を合わせようと彼女を掴む。
すると彼女は「んぎゃぁあぁ」など、毎回違う奇声を出して逃げ出すのだ。
「あのルッチに捕まっても逃げ出せるなんて、クロエしか出来ないわよね」
「それもそうじゃが…あの場合、間近で奇声を聞くルッチが可哀想で仕方ないわい」
おそらく、彼女の声の大きさと、バリエーションある言葉に、彼の思考が一瞬飛ぶのだろう。
傍から見ていたら実に面白い光景なのだが。
「また逃げられたわね、ルッチ」
「なんなんだ、アイツは」
最初こそ放置していた彼だが、あのストーカーとも取れるチラ見がうっとおしいようだ。
哀れに見てくる仲間の視線を無視しつつ、彼は内心笑った。
カクやカリファは知らない。
クロエの胸元には、あの時贈った指輪がチェーンに繋がって揺れていた。
どうせ、あの時の店主から変なことでも吹き込まれたのだろう。
その意味を、あの足りない頭で必死に考えていると思うと、思わず笑いがこみ上げてくる。
ゆっくりと紅茶を喉に通しながら、ルッチは内心笑った。
まだ、目の前の仲間やクロエには告げず、じっくり様子を楽しもう、と。
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※あの指輪をちゃんと持っていてくれてることに、ルッチは内心喜んでいるといいなーなんて思ったり。
その後この事をカリファに告げたクロエ。そして、カリファに妖しげな笑みを向けられるようになったルッチ。