第6章 プレゼント(ロブ・ルッチ)
久しぶりにルッチとの任務に就いた。
私とルッチは能力が桁外れに強いため、とてつもなく危険な任務か、よっぽど重要な任務でない限り一緒にはならない。
それが今回は一緒。久しぶりに顔を合わせたことも会って、少々感傷に浸ってもいた。
それを、あの男はうっとおしいの一言で再会の第一声は終わった。
今回の任務は簡単なものだけれど、関わってくる人物が重要なため、2人が駆り出される。
「久しぶりー、の一言くらいないわけ?」
「…任務に支障が出ないようにその口縫っとけ」
「こんのぉ……」
今にも喧嘩を吹っ掛けたいのは山々なのだが、任務地への移動途中。
疼く口を無理やり閉じ、少々歩みの速いルッチの隣にならんだ。
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ばしんっ
頭に重い一撃が振ってきた。
「んぁん?」
どうやら見下ろすルッチに叩かれたようだ。
変な声を出して重たそうに瞼を開けたクロエに、ルッチはコートを物凄い勢いで投げつけた。
ぶっ、と衝撃を顔面で受けた彼女を見ることなく海列車から降りる準備をするルッチ。
目的地に着いた海列車は彼女らが降りるのを待つのみ。
一応長官もいるのだが、この列車では長官よりも彼女らのほうが丁重に扱われる。
それだけ、彼女らを敵に回してしまうと厄介なのだ。
おだておだての至れり尽くせりの状況だ。
「もう着いたのかぁ…」
もっと寝てたかったな、と包み隠さず欠伸をするクロエにルッチは早くしろ、と言わんばかりに睨み付けた。
それを知ってか知らずかクロエはのろのろとした動作で短いシルバーの髪の毛を撫で付ける。
どうやら変な寝方をして髪の毛が浮かんだようだ。
「降りるぞ」
「はぁい」
ルッチの後ろに着きながらコンパートメントを出る。
列車から降りると仰々しいまでに整列した海軍兵隊の間を通り抜け、長官の待つ扉へと進む。
「遅い」
「俺の所為じゃない」
「…はいはい。私の所為ですよ。ごめんなさ…っ」
「あ?」
「ひゅみまひぇんれしゅ」
長官の文句。
それにワザとらしい、少々カチンとくる言い方をしたクロエにルッチは振り返って彼女の顎を強く掴む。
口がひょっとこになったクロエは、そんなことを気にせずに真っ先に謝罪を述べる。
それだけ彼の機嫌が損なっていたのに、今更ながら気づいたのだ。