第7章 その瞳にうつるのは❄︎【時透無一郎】
僕の継子は年上で身長も高い、お姉さんみたいな人だ。
何も言わなくても、
『あら?今日は何か良いことあったのね、嬉しそうだわ』
『今日は、時透くんの好きなふろふき大根よ!』
などと、表情に出さなくても分かるらしい彼女は、優しく微笑み姉のように母のように僕を見守っている。
いつしか、僕は彼女に…雪柳に恋していることに気づいた。
雪柳は、自分がモテることに気づいていない。
どこかに行こうと男に誘われても、にこにこと微笑み
『ごめんなさい。わたし忙しいの。帰ってやらないといけないことがたくさんあって…』
と断る。
それは別にいいと思う。
僕がモヤモヤしてイライラするのは、肩や腕を簡単に掴まれることだ。
雪柳はその辺の男より強い。
僕の継子だからね。
けど、そういうことでない。
僕以外に触れてほしくない、と独占欲がじわじわと心を支配する。
雪柳は誰のものでもないのに、おかしいなぁと思う。
僕に優しく微笑む雪柳を見ると、僕の心は黒くドロドロした感情が白く綺麗な光に浄化されるようだった。
あぁ、やっぱり僕は雪柳が好きだ。
この気持ちを伝えることはしないけど…
なんてことを考えていると、任務先に着いていた。
「…早く帰ろう」
僕は一言そう呟くと、鬼の気配を辿るように走り出した。
❄︎
任務先に到着すると、辺りはほぼ街灯がなく薄暗い印象を受けた。
『よし!』
わたしは気合を入れると、村の外れにある森に足を向けた。
この辺の目撃情報によると男女の鬼が出ているとか…
わたしのような一般隊士に複数の鬼の討伐ができるか、少し不安があるが泣き言を言っている場合ではない。
行方不明者が増えているし、なによりも村の人たちの不安の種だ。
早々になんとかしなければ…わたしはそう思うと、もう1度気合いを入れ直す。
森に入りしばらく歩くと、この辺は人がよく入る森のようで荒れているどころか、綺麗に整備されている。
道に迷わないように木で出来た看板があり、どこに行けばいいか分かるようになっている。
『結構、綺麗にされているみたいね』
と、ひとり呟くと鎹烏が反応し答える。
「この村は小さいし、隣町に行き来するのに通る道なのよ」
『あぁ、だから結構道幅が広いのね』