第7章 その瞳にうつるのは❄︎【時透無一郎】
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「雪柳、今日の稽古どうしよっか」
時透くんはぼんやり空を見上げながら、そう呟いた。
わたしは洗濯物を畳む手を止め、
『そうねぇ…時透くんと手合わせがしたいわ!』
そう言うと、時透くんを見る。
いつの間にかこちらを見ていたらしく、ぱちりと目が合うとわたしは微笑む。
「そう」
時透くんは少し素っ気なく答えると、ふいとそっぽを向いてしまった。
わたしと時透くんは、継子と師範関係だ。
使う呼吸は違うものの、時透くんに身体の使い方、剣筋を褒められ継子にしてもらった。
わたしと時透くんは6歳の歳の差がある。
そして、わたしと時透くんは10センチの身長差もある。
わたしは170センチと時透くんより10センチも身長が高い。
それも関係してか一般隊士…特に時透くんと歳の近い女の子に、"継子の人、歳上で身長高いよね!"と。
時透くんを好きなわたしに、追い討ちをかけるように"わたしなら、時透くんに身長も歳も近いしお似合いだと思うの"と言っているのを見てしまった。
わたしはこの気持ちに蓋をした。
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数日後、わたしは任務の連絡が来ていたため、出かける支度を始める。
隊服に袖を通し、姿見の前に立ちくるりと回る。
『…そろそろ、隊服の袴の丈も長くしてもらおうかしら…』
わたしは姿見に写った自分の袴の丈の長さを見る。
膝上15センチほどのミニ丈、足を隠すようにニーソを履いているが歳も歳だし…と考えていると
「雪柳、これから任務でしょ。いつまでなにしているの?」
と、廊下から時透くんが声をかけてくる。
それにハッとすると、
『あっ!ごめんなさい、少し考え事を…すぐ行くわね』
そう言うと、どこか変なところがないか再度確認すると部屋を出た。
急いで台所へ行き、簡単な軽食を用意する。
わたしは隣りの居間にいる時透くんに向かって声をあげる。
『時透くん、ご飯どうする?』
「僕も食べるよ。これから任務だし」
そう言いながら台所へ入ってきた。
時透くんを見ると隊服に身を包み、ほんの少しぼんやりとした表情を浮かべている。
『時透くんも任務なのね。おにぎりとお漬物、お味噌汁なのだけど、大丈夫かしら?』
そう聞くと時透くんはこくりと頷き、居間へ戻った。
その後、完成したご飯をふたりで食べそれぞれ任務へ向かった。
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