第6章 蛇柱と炎柱に言い寄られてます【小芭内・杏寿郎】
"夜に人がいなくなる"考えられることとすれば、夜中の内に逃げ出した…つまりは夜逃げ、もしくは、鬼が出たことになる。
ただ、前者の可能性は低いらしい。
居なくなった人の中に金持ちがいたからだ。
そうすると出てくる答えは、ほぼ後者である鬼が人間を殺し、喰べたのだろう。
わたしは思考を巡らせると、はぁとため息をついた。
お屋敷を出るには少し早い気もしたが、たまには集合場所に早く着いておくのも悪くはないか、と思ったのだ。
わたしは隊服を身に纏うと、身だしなみを整える。
櫛で髪の毛を丁寧に梳かす。
全身を鏡で確認し、腰に日輪刀を挿すと玄関に向かい、ブーツを履いた。
『行ってきます』
お屋敷には誰もいないが、行ってきます、ただいまを言うようにしている。
これをすることで、気持ちを切り替えるスイッチになっている。
わたしは集合場所を目指し、ゆっくり歩き出した。
❄︎
(これは一体どういうこと…!?)
わたしが集合場所に着くと、そこは殺伐とした空気が漂っていた。
そう、その場所には柱である伊黒さん、煉獄さんがいたのだ。
『え…っと…おふたりとも任務ですか…?』
わたしは恐る恐るそう聞くと、ふたりは一斉に顔を此方に向け
「あぁ!そうだとも!」
「あぁ、そうだ」
と同時に答えた。
『え…柱が3人も一緒ってあり得ないのでは…?」
「いや!何も間違ってはいないぞ!雪柳!」
と煉獄さんが大きな声で答えると、伊黒さんは煉獄さんを睨みつけつつ肯定した。
「ちっ…あぁ、何も間違えていない。雪柳は何も心配することはない」
『はぁ…まぁそれなら早く行きましょうか…』
わたしはこの状況にげんなりしつつも、そう言うと歩き出した。
もちろん彼らはわたしを間に挟み、些細な言い合いを繰り返していたのは言うまでもない…
❄︎