第6章 蛇柱と炎柱に言い寄られてます【小芭内・杏寿郎】
わたしはそういうと、少し冷めた紅茶をひとくち飲み込んだ。
『わたし、両親の仇を打つために鬼殺隊に入って、やっと柱になれたんです。ここまで積み重ねたものを壊したくないですし、わたし、結婚願望ってないんですよねー』
わたしはふふふと笑うと、蜜璃ちゃんは驚いたような声を上げた。
「えぇっ!?椿姫ちゃん、とっても可愛いのに…結婚願望がないの!?」
『え…う、うん…』
いつもの蜜璃ちゃんの口調が崩れていることに驚きつつも、わたしは頷いた。
「椿姫ちゃん…確かに、鬼殺隊のお仕事は私も大切よ。でもね、椿姫ちゃん。椿姫ちゃんの人生も鬼殺隊で全て使ってしまうのは勿体無いと思わないかしら」
蜜璃ちゃんは少し真剣な表情を浮かべ、わたしの瞳をじっと見据えた。
『そう、なんだけど…わたし恋愛経験がなくて…だから、誰かを好きになったことなんかないんですよねー…』
わたしは消え入りそうな声で呟くと、蜜璃さんは
「きゃー!椿姫ちゃん!とっても初々しいのね!キュンとしちゃう!」
そう言って頬に両手を当てて、身体をくねらせていた。
『蜜璃ちゃん、いまはそういうことを言ってるんじゃないんですよ…。わたし、どうしたら…』
わたしは、もう何度目か分からないほどのため息をついた。
「でも椿姫ちゃん、人はいつ恋に落ちるか分からないものよ!」
蜜璃ちゃんはどこか真剣な表情でそう言った。
『たしかにそうかもしれないけど…わたしはいまのままで十分ですし…恋愛をしたいわけでもないし、まして結婚なんて…』
でも、だってを繰り返すわたしに蜜璃ちゃんは、優しく微笑むと
「いまはそうだけど、これからは分からないものだわ!そんなに深く考えなくていいと思うの」
そう言って紅茶を口に含んだ。
❄︎
わたしと蜜璃ちゃんはしばらく他愛もない話をしていたが、お互い任務があり、任務に差し支えない程度で解散した。
蜜璃ちゃんのお屋敷を出て、わたしは1度帰宅し、湯浴みや簡単な食事を済ませると任務に備える。
今日の任務は、少し離れた場所にある煌びやかな印象の街だ。
そこでは、人が夜になると居なくなると噂になっていた。