第6章 蛇柱と炎柱に言い寄られてます【小芭内・杏寿郎】
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わたし、雪柳椿姫はなぜか蛇柱である伊黒小芭内さんと、炎柱である煉獄杏寿郎さんから求婚をされている。
私の姿を見つけると、挨拶代わりにすぐ求婚を始める。
『え…っと…わたし、やっと柱になれたし…それに、祝言を挙げようとか考えてないし…』
ごにょごにょと言葉を濁し、わたしは脱兎の如く逃げ出す日々を繰り返していた。
最近、一般隊士から柱の面々、お館様にまで知れ渡り、いまはあちこちで名物化している(らしい)。
それでもわたしは、誰とも祝言を挙げる気はないのだ。
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『はぁ…』
わたしは今日も何度目か分からないため息をついていた。
今日は朝から煉獄さんに会った。
「雪柳じゃないか!任務帰りか!」
『あ…煉獄さん、任務帰りです。煉獄さんもですか?』
わたしは後ろから煉獄さんに声をかけられ、振り返るとニコニコと笑みを浮かべる煉獄さんと目が合った。
「あぁ!俺も任務帰りだ!朝食を一緒にどうだ?」
煉獄さんは私の横に並ぶと私を見下ろしつつ、頭に手を伸ばし、頭を撫で始めた。
『あー…煉獄さん?どうして、わたしの頭を撫でているんです?』
わたしはどうすることも出来ず、そのまま受け身でいた。
「抜け駆けか、杏寿郎。お前はいつもいつも…」
声が聞こえた方に視線を移すと、そこには伊黒さんと鏑丸くんがそこにいた。
伊黒さんは怒ったような表情を浮かべ、煉獄さんに指を刺していた。
「今日は俺が雪柳を食事に誘おうと思っていたんだ」
「小芭内じゃないか!これは早い者勝ちだろう!」
一触即発…という感じでふたりは言い争っている。
わたしはその隙に脱兎の如く逃げ出し、避難先と言っても過言ではない蜜璃ちゃんのお屋敷に来ていた。
「あーん!椿姫ちゃん、そんなに悩んでいる姿も可愛いわっ!」
蜜璃ちゃんはにこにこと周りにハートを飛ばしながら、わたしの話を聞いてくれた。
「椿姫ちゃんはどう思っているのかしら?伊黒さんのこと、煉獄さんのこと」
蜜璃ちゃんは少し真剣な表情を浮かべると、わたしにそう言った。
『伊黒さんや煉獄さんを…?それは恋愛感情があるかどうかってこと…ですか?』
「そうよ!椿姫ちゃん!」
『うーん…わたしは…特にないですね…』