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【鬼滅の刃】雪夜の花【短・中編集】

第5章 蛇神さまに嫁入りします【伊黒小芭内】



蛇神さまと暮らし始めて数日が過ぎた。

蛇神さまは少食だということ、なぜかわたしを甘やかそうとしてくること、まじないで鱗のような肌を人間のような肌に見せることができることなどを知った。

 『蛇神さまはわたしを手懐けてから、食べようとしているんですか?』

と聞くと、蛇神さまは一度動きを止めてから、わたしの両肩に手を置き顔をグッと近づけた。

 「それはない!」

 『!!』

わたしはその大胆な行動と、ハッキリそう言った蛇神さまに驚きつつも、首を縦に振ることしかできなかった。

❄︎

よく晴れた午後、縁側に並んで座る蛇神さまが一言呟いた。

 「お前は…椿姫は、どうしたい?」

主語はなかったが、言いたいことはわかった。

“このまま結婚するか、別の村に行くか、決めたか?”

そう聞いていることに。
わたしは、悩むことなく答えた。

 『わたしは蛇神さまと一緒に暮らしたいと思っていますよ。この数日、蛇神さまと過ごしてわたし自身がそう思いました』

そう答えると、嬉しそうに微笑んだように見えた蛇神さまは、わたしをそっと抱き寄せた。

 「…あぁ、俺もそう思っていた」

わたしの中に生まれたこの感情は、おそらく蛇神さまに対する愛だったのだろうか。
このときのわたしには知る由もなかった。

❄︎

祝言を挙げる日になった。
この日はふたりだけで祝言を挙げることになった。
蛇神さまのご両親を呼ぶのかと思っていたら、

 「呼ばないし、ふたりだけだ」

と、さらりと言われた。
わたしの身内は勿論呼べない。
わたしを花嫁という名の生贄に選び、今日は命を絶つ日だから。
生贄と選ばれた日からわたしは、わたしの家族を家族だと思えなくなりつつあった。

などと、頭の片隅で思い返しつつ、蛇神さまに疑問をぶつけた。

 『ふたりなのにこれ着るんですか…』

わたしは白無垢を指差した。
蛇神さまは何の疑問も持たずに、

 「勿論。俺の花嫁さまだからな。先に神殿に行く」

と言うと部屋を出て行く。
わたしは小さくため息をつくと、白無垢へ着替え始めた。

❄︎

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