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【鬼滅の刃】雪夜の花【短・中編集】

第5章 蛇神さまに嫁入りします【伊黒小芭内】



❄︎

 『はぁ…』

わたしは、荷造りの手を止め母に言われた言葉を思い出すたびに、何度目か分からないほどのため息をついた。

そう、それは母が言った "嫁入りが決まった" 、という言葉。
わたしは "蛇神さまへの贄に決まった" と、遠回しに言われたのだ。

嫁入りは1週間後に決まったらしい。
ここ最近、雨が少なく農産物がうまく育たないため、話し合いをしていた。
近々あるだろうとは思っていたが、まさか自分だとは思わなかった。

わたしには2歳年上の姉がいる。
嫁入りに選ばれるのは姉だと思っていたのに、実際はわたしの方に白羽の矢が立ったらしい。
母が言うに、姉に縁談が来たとかなんとか…
それなら歳の近いわたしになるのもおかしくはないか…などと考え込むうちに、辺りは薄暗くなり始めていた。

 『…嫁入り、か…』

わたしは、またため息をつくと止まっていた手を動かし始めた。

❄︎

粗方、必要のないものなど片し終わった。
それにしても物が少ないなぁとわたしは肩をすくめた。
必要なものはほんの少しで、小さな荷車に収まるほどになり、当たり前だが捨てるものの方が多い。

一息つくと、廊下の方から声がかけられた。

 「椿姫…?少しいいかな」

姉の声だ。
わたしは少し考え、すぐに

 『えぇ、少し散らかってるけれど…』

と言いつつ、襖を開けた。
そこには、少し気まずそうな顔をした姉が立っていた。

 「椿姫…」

 『このことは姉さんのせいじゃないでしょう。謝らないでちょうだい』

部屋に入ることを促し、わたしは姉に背を向けてそう言った。

 「そう…よね…。嫁入りが決まる少し前に縁談が来ていたの」

姉はそう言ってから座った。
わたしも姉の向かい側に座り、お茶を入れ姉の方に出す。

 「わたしは断るつもりだったのよ。そろそろ嫁入りがあると思っていたし…でも、いつの間にか決まっていたの…」

姉は俯いていた。

 『…その話をして、わたしにどうしろっていうの?怒ればいいの?仕方ないって言えばいいの?わたしは、雪柳の家に産まれた娘よ。ほとんどの娘が贄にされてきた。変えようのない事実だわ』

わたしは一気に話したせいであがった息を整えるかのように、数回深呼吸を繰り返した。

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