第4章 蛇柱さんはねちっこい【伊黒小芭内】
隠が到着してから引き継ぎを椿姫に任せ、離れるようにして木に背中を預け目を瞑る。
椿姫が引き継ぎを済ませると、こちらに寄ってくると
『終わりました!帰りましょうか』
そういうと、椿姫の手を引く。
驚いた表情の椿姫はすぐに笑顔になった。
その顔に堪らなくなり、椿姫を抱き上げるとそのまま走り出す。
戸惑うような表情を浮かべる椿姫に
「…すまない」
それだけ言うと椿姫は優しく微笑んだ。
その表情をするな…などと内心ツッコミを入れつつ、邪な気持ちを紛らわすように無心で屋敷を目指した。
❄︎
小芭内さんの口数が少なくなったと思ったら、急に抱き上げられ、気が付いたらお屋敷に着いていた。
『小芭内さん…?急にどうしたんですか?』
わたしが近づき、小芭内さんを見上げるとほんの少し潤んだ瞳で見つめ返される。
わたしはドキドキして少し落ち着かない気分になり、
『あ、あの…っ!どうしたんですか?具合悪いんですか…?』
小芭内さんの額に手を伸ばすと、その手をぎゅっと掴まれると引き寄せられた。
『きゃぁ!?』
わたしはよくわからないまま、小芭内さんの腕の中に収まっていた。
『お、小芭内さん…?』
「すまない…」
さきほどより頬が赤く染まっている気がする…
そう思うと同時に小芭内さんの顔が近づき、唇にそれが触れる。
離したと思ったら、額に、まぶたに、頬に、手の甲に、指先に…触れるだけの口づけを繰り返した。
そして、首筋に唇を寄せるとちゅっと吸われる。
『ひゃぁっ!?』
わたしは驚いて、変な声が出たと慌てて口を押さえる。
それを小芭内さんは横目で見て、ふっと満足そうに笑う。
『(その色気…はれんち、です…)』
そう思いつつも言葉には出せなかった。
首筋におそらく所有印を付けたのだろう。
あの悪戯が成功したような、どこか勝ち誇ったような表情は前にも見たことがあったからだ。
再度、首筋に顔を埋めると口づけを繰り返し、ときおり優しく噛みついたり、所有印を残していく。
『んっ…はぁ…おばな、いさん…?』
わたしは小芭内さんの頬に手を当て目を見ると、そこには欲の色を滲ませた瞳と目が合った。
❄︎