第4章 蛇柱さんはねちっこい【伊黒小芭内】
わたしたちの近くに鬼の気配がある。
そろそろと近づいて来ている…そう感じるが、わたしより柱である小芭内さんはどんな鬼なのかは分かっているだろう。
小芭内さんは隠していた日輪刀に手を伸ばす。
鬼からは死角になり見えていないはず…
その間、わたしは小芭内さんにまとわりつくように、その手の動きを見せないように愛の言葉を囁く。
『あなた…』
首に両腕を回し、口付けをせがむように甘い声を出す。
「どうした?愛しい俺の妻よ」
空いている手を頬に伸ばし、額に、まぶたに、頬に、唇に口づけをする。
その隙に鬼が近づいてくる…気配がする。
小芭内さんはほんの少し離れると、微かに頷く。
鬼が近づき、こちらに攻撃を仕掛けてくるまでほんの一瞬だった。
こちらに鋭い爪が届く前に、小芭内さんの波打つ日輪刀が鬼の頸に届いた。
音もなく鬼の頸が身体から離れ、ごろごろとそれが転がる。
『すごい…』
いつ見ても小芭内さんの剣筋は迷いがない。
動きも滑らかで、淀みがない。
「隠を呼ぶか」
わたしたちはこのまま引き継ぎをすれば終わりのため、着替えることなくこのままいることにした。
程なくして隠が到着し、現場の引き継ぎをしわたしたちは帰路に着いた。
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