第1章 幸せのかたち【伊黒小芭内】
湯浴みを済ませ、寝間へ行く。
椿姫は俺より先に済ませるようにいい、先に寝間にいる。
俺は高鳴る気持ちを抑えるように、寝間の襖を開けた。
「椿姫?」
寝間の中を覗くと、布団の隅に正座をして緊張した面持ちの椿姫がこちらを見た。
『お、小芭内さん…』
「ふっ…そんなに緊張するか?」
思わず笑ってしまった。
『はい…とても、緊張します…』
椿姫は頬を染めたまま、ほんの少し困ったように笑った。
俺は寝間に入り襖を閉め、椿姫の隣へ座った。
「椿姫」
『…はい、小芭内さん』
椿姫はゆっくりと俺の方を見た。
その頬は先程より赤みが増していた。
「…いいか?椿姫」
『はい…』
差し出した手に椿姫の手が重なる。
緊張や不安からか、その手は微かに震えていた。
「大丈夫だ、椿姫」
椿姫の手を優しく引き、身体を優しく抱き寄せた。
『はい…優しく、してくださいね』
椿姫は故意的なのか、無意識なのか分からないが、潤んだ瞳で上目遣いをしてきた。
「…っ……あぁ、善処しよう」
本日2度目になるであろう、俺の嫁はどうしてこんなに可愛いんだ…と内心思った。
『小芭内さん…』
椿姫のその一言を合図に唇を合わせた。
『ん…っ』
椿姫は俺の浴衣をぎゅっと握る。
唇を離すと真っ赤に染めた頬、潤んだ瞳でこちらを見た。
「鼻で息をすると良い」
また、唇を合わせると唇の隙間を舌先でつつく。
ほんの少し口が開くと、それを見計らったように舌を入れた。
『んっ……んん…っ……』
唇の隙間から漏れる息と、舌が絡み合う、くちゅりという粘着質な音が聞こえる。
『んっ…はぁ……ぁっ……』
息が続かないのか、合わせた唇の間から微かに椿姫の声が漏れる。
唇を離すと、肩で息をする椿姫が先程より力が抜けた手で、俺の浴衣を握っていた。
「椿姫」
名前を呼ぶと目に涙を浮かべてこちらを見た。
初めて見る色っぽい表情に、俺は鼓動が速くなるのを感じた。