第14章 きみは手のひらの上 罪と罰❄︎【善逸・無一郎】
僕は学校から帰り、着替えようと自室へ入る。
制服を脱ぎ始めると、電話が鳴った。
「はい、もしもし」
「あ、無一郎!椿姫がっ!」
電話越しに焦る善逸さんの声が聞こえた。
「え、落ち着いてよ。どうしたの?」
「椿姫が、遠方の祖父母の家に行ったって」
「え…?」
僕たちになにも言わずに、遠方の祖父母の家に…?
どうして…?
「無一郎はなにも聞いてないの?」
「なにも、聞いてない…」
その後の会話をあまり覚えてない。
電話を切って、メッセージアプリを開き椿姫さんにメッセージを山のように送ったのに、既読にならなかった。
電話をしても電話に出ることなく、無機質な女の人の声がスピーカー越しに聞こえるだけだった。
椿姫さんが居なくなって、どれほどの月日が流れたのだろうか…
「ねぇ、椿姫さん…ちゃんと告白していたら、変わったのかな…?」
答えが返ってこないことは分かっているのに、何度も何度も自問自答を繰り返す日々が続いた。
無関心だった有一郎でさえ、僕を心配するほど。
有一郎は両親とともに旅行に出かけていたし、久しぶりに顔を合わせた。
僕は有一郎にこの夏休み中の出来事を隠すことなく、ぽつりぽつりと話し出した。
全て聞いた有一郎は、僕の頬を力一杯平手打ちをして
「…どうしてそんな…っ!!好きな人を傷付けて…!」
そう言うと有一郎は部屋を出て行った。
有一郎の言う通りだ。
好きだと一言すらも椿姫さんに言ってない。
ははは、と乾いた笑いしか出てこなかった。
流れる涙に気づかないふりをして、じんじんと痛む頬をそのままに僕は椿姫さんに届かない言葉で謝り続けた。
そして、椿姫さんが姿を消して半年後、善逸さんから椿姫さんが休学していることを聞いた。
❄︎