第12章 傷跡ごと愛してる【錆兎】
「…ぁ…」
男は掠れた声を出し、冷や汗を流した青い顔をしていた。
俺は冷め切った目で男を睨むと男は数歩後ずさる。
「…外に出ようか。お前と話したいことがあるんだ」
俺は男に笑うと、男は引き攣った顔をしつつも頷いた。
❄︎
服を着てから外に出ると、男はどこか気まずそうな顔をしながら俺を顔を見ていた。
「…お前は椿姫に手酷いことをしているようだな」
「オレはそんなこと…!!」
俺は男を睨むと口もごり俯いた。
「椿姫はお前と別れたいと言ったそうだな?お前は暴力をし、別れることをしなかった。椿姫の身体中にある傷や歯型、暴言の数々…。さて、お前はどうしたい?」
俺は男を見ると男は視線を彷徨わせると小さく呟いた。
「…別れたく、ない…椿姫だけなんだ!こんなオレを包み込んでくれたのは!!」
「…はぁ?お前が椿姫を縛りつけただけだろう?それを包み込んでくれた?ふざけるな」
「!!」
「椿姫はお前と別れたいと、泣いていた。身体中に傷や痣があった。こんな身体見せられない、と泣いていたんだ。お前は椿姫のことを考えたことがあるか?きちんと椿姫と向き合ったか?」
「……」
男は口をつぐみ俯いた。
「俺は椿姫が好きだ。子どもの頃からずっと好きだった。お前と付き合った椿姫を見て、椿姫が苦しんでいることが分かった。花のように微笑む椿姫がいまは引き攣ったような、疲れたような笑みで笑う。お前は椿姫に釣り合わない」
俺は捲し立てるようにそう言うと、男は絶望しきったような顔をした。
「今後一切、椿姫に近づくことを禁ずる。もし、一度でも近づけば椿姫が残していたお前との会話、身体中にある傷や痣の診断書等を持ち、弁護士を立てよう」
「!!」
「お前は椿姫を守るどころか苦しめた。慰謝料を取らないだけありがたいと思え」
俺はそう言い捨てると椿姫の家の玄関の扉を開き中へ入ると、バタンと音を立てて扉が閉まった。
これで椿姫が幸せに暮らせるなら…俺が椿姫を守ろう、と心に誓った。
そして、椿姫を守るために、ひとつの考えを思いついたのだった。
❄︎