第12章 傷跡ごと愛してる【錆兎】
『んっ…』
朝日がカーテンの隙間からこちらに入ってきていて、それで目が覚めた。
わたしは後ろから身体を抱き寄せられるようにして寝ていた。
後ろを振り返ろうと身体を動かすと
「…んんっ…」
と声が聞こえた。
身体を一瞬硬直させてから、昨日のことを思い出す。
昨日は錆兎がうちに来て、隅々まで愛されたんだった…そう思うと頬が赤くなる。
「ふふっ…」
『!!』
頭の上から笑い声が聞こえて、振り返ると頬を緩めた錆兎がわたしを愛おしそうに見ていた。
『え…いつから起きて…』
「うーん…椿姫が起きる前から」
『え…』
錆兎はわたしの反応が見たいがために、寝たふりをしていたらしい。
「もぞもぞしてるなーって思ったら、急に固まるし、そのあと布団を頭からかぶってるし…もう俺の彼女可愛すぎるでしょ…」
『ひゃぁっ!?』
錆兎はわたしをぎゅっと抱き寄せると、耳たぶにちゅっとキスをした。
「ねぇ、椿姫」
錆兎はわたしの名前を呼ぶと起き上がると、わたしの手を引き起こす。
わたしの手のひらを大きな手のひらで包むこむようにすると、わたしの目を覗き込むように目を合わせた。
「俺さ、ずっと椿姫が好きだったんだ。やっとあの男と別れられたんだ。俺と結婚を前提に付き合って欲しい」
『え…』
「本当はすぐに結婚したいんだ。でも椿姫は嫌だろう?だから、椿姫が俺と結婚したいって思った頃に結婚しようと思うんだ」
錆兎はわたしが暴力を受けていたことを考慮しつつも、たくさん考えていたことを初めて実感した。
わたしはそれが嬉しくて嬉しくて、目を涙を浮かべただけで錆兎は慌てたように口もごる。
『…嬉しい。ありがとう、錆兎。身体中、傷だらけだし、痣だらけなのにお嫁さんにしてくれるの…?』
「あぁ、俺はどんな椿姫でも好きなんだ」
『うん…わたしも、錆兎がいい…!』
わたしは錆兎に抱きつくと、錆兎はなんなくわたしを抱き止め、そしてぎゅっと抱きしめた。
「あぁ、俺も椿姫がいい。誰よりも幸せにしてやる」
錆兎はわたしの顎を持ち上げると、キスをした。
何度も、何度も……
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Fin.
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