第12章 傷跡ごと愛してる【錆兎】
『あっ…んっ…は、ぁっ…』
気づけば着ていた服は全部脱がされていて、錆兎に傷や痕を撫でるとそこを労るように優しくキスをされた。
「…今日は俺だけみていて欲しい」
錆兎は少しだけ困ったように微笑んで、わたしの頬を撫でながらそう言った。
錆兎がどこかに行ってしまいそう、そんな気がしてわたしはこくりと頷くと、錆兎はただなにも言わずにまぶたにキスをひとつ落とした。
「椿姫…」
錆兎に名前を呼び顎を持ち上げると、噛み付くようなキスを始めた。
『んっ…ふ、ぁ…』
くちゅっくちゅっと口内を舌先で犯し始める。
歯列をなぞり、上顎を撫で、舌先をちゅっと吸うと唇が離れた。
『はぁ…はぁ…』
お互いの唇を繋ぐように銀色の糸がかかっていたが、それもぷつりと途切れた。
「椿姫…好きだ」
わたしはそれだけでいっぱいいっぱいで、ただ頷くことしかできなかった。
「ふっ…可愛い」
錆兎はわたしの頬を撫でるとわたしを優しく押し倒した。
「…あの男と別れるためだから我慢してな」
『んっ…』
錆兎はどこか苦しそうな笑みを浮かべた。
わたしはそんな表情を浮かべて欲しくなくて、両手で錆兎の頬を包み込んだ。
『さ、びと…すき…っ』
「!!」
わたしがそう言うと、錆兎は驚いた顔をしてわたしをじっと見つめるとふっと笑った。
「あぁ、俺も椿姫が好きだ。ずっと、ずっと昔から」
『うん…!わたしも…ずっと好きだったの…でも諦めなくちゃって…』
わたしはここにきて初めて本心を錆兎に伝えることができた。
どうか…どうかこの幸せが壊れないで、ずっと続きますように…
わたしは錆兎の腕の中で、涙を流しながらそう願わずにいられなかった。
❄︎