第12章 傷跡ごと愛してる【錆兎】
わたしは途中まで錆兎に送ってもらい、アパートへ帰宅した。
暴力を振るう彼が来るのは早くても夜の9時過ぎ…
それまでに洗濯や掃除、食事、お風呂を済ませておく。
わたしは先ほどの錆兎とのやりとりを思い出し、ひとつため息をついた。
錆兎がわたしを好き…
わたしも錆兎が好き…
でも…
錆兎に告白をされたわたしは返事をすることができなかった。
彼氏がいるし、その気持ちに向き合ってしまうと抑え込んでいた欲を抑え込めない気がしたから…
♪〜 ♪〜
携帯からメッセージを知らせる音が聞こえる。
わたしはすぐにメッセージを開く。
彼氏だった場合、すぐに連絡しないとどうなるか分からないからだ。
メッセージは錆兎からで、
"今日、8時にそっちに行く。ぶっつけ本番になるが作戦決行する"
と書いてあった。
"わかった。来るときは連絡してね"
手早く文字を打ち込み送信ボタンを押した。
わたしは深呼吸を繰り返し、覚悟を決めた。
❄︎
携帯の時間を確認すると8時になる10分前だった。
思ったよりも早く出過ぎたな、と苦笑いを浮かべると椿姫に電話をかける。
しばらくコール音がしてから椿姫の声が聞こえた。
『もしもし…?』
椿姫の声はどこか不安気だった。
「もしもし、椿姫。あと5分くらいで着きそうなんだけど、そっちに行っても大丈夫か?」
『うん、大丈夫だよ。彼からも連絡ないし、来るときはいつも連絡ないから…』
椿姫はそう言った。
「そうか…」
『うん、気をつけてね』
そう言うと椿姫は通話を切った。
椿姫はDV男と別れたいとも、別れたくないとも言わなかった。
おそらく1度や2度、別れ話を持ち出して暴力を振るわれたのだろうと思った。
そう思考を巡らせていると、あっという間に椿姫が住むアパートに着いていた。
階段を登り、インターホンを押すとガチャガチャと鍵とチェーンロックを外し、扉を開けた。
俺はビックリして椿姫の両肩をガシッと掴み
「椿姫!インターホンで先に出ないと危ないぞ!」
そう言うと椿姫は驚きつつも、困ったように眉を下げる。