第12章 傷跡ごと愛してる【錆兎】
アパートへ着くと、椿姫をベッドへ寝かす。
化粧をしているが顔色が悪く見えるし、時折うなされる椿姫を見ていられなくなり、肩を揺すって起こすことにした。
「椿姫起きろ、椿姫」
何度か声をかけると、椿姫はゆっくりと瞼を開き、何度か瞬きを繰り返した。
『ん…あ、れ…ここは…?』
「ここは俺の住むアパートだ。椿姫、大丈夫か?顔色も悪いし、こんなにやつれて…」
椿姫はそう聞くとゆっくりと身体を起こした。
俺は椿姫にそう答えると同時に、椿姫の頬へ手を伸ばすと椿姫はびくりと肩を揺らし身を縮こまらせた。
『!!あ、えっと…これは…』
椿姫はどこか焦ったように視線を泳がせる。
これは子どもの頃からの椿姫の癖だ。
「椿姫、どうしたんだ?なにかあるなら言って欲しい」
俺は椿姫の顔を覗き込むように、瞳をじっと見つめると、椿姫は恐る恐る視線を合わせた。
すると、その両目には今にも溢れそうなほどの涙が溜まり、椿姫は下唇を噛むように俯いた。
俯くと同時に椿姫の膝に置いた手の甲に、ぽつりぽつりと涙がこぼれ落ちて、椿姫にかけていた布団にシミを作った。
『……けて…』
「え?どうした?」
よく聞き取れない、と椿姫に身体を近づけると椿姫は俺に縋るように、震える両手で俺にしがみつく。
『助けて…!錆兎っ…!』
椿姫の瞳からは大きな涙の粒が後から後から溢れ出して、そのやつれた頬をなぞるように顎先に流れひとつひとつ零れ落ちていった。
そのあと過呼吸を起こした椿姫を落ち着かせると、詳しく椿姫から話を聞き出す。
話はこうだった。