第12章 傷跡ごと愛してる【錆兎】
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『や…めてっ…!』
わたしは首を絞めつつあるその手を引き剥がそうともがく。
「あ?誰にそんな口聞いてるんだよ?!椿姫!」
『う゛っ…ぐ、っ…!』
その人は先ほどと比べものにならないくらい強くわたしの首を絞める。
その間にもその人は腰をわたしの秘部に打ちつける。
部屋に肌を打ちつける音と、わたしの呻く微かな声、その人の私を罵るように怒鳴る声を聞きながら、わたしの意識はどんどん薄れていった…
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わたしの身体には数えきられないほどの鬱血痕や歯型、手首には手錠やロープで擦れた痕がある。
なんでも話せる親友には
「それは完全にDVだよ!?早く別れないと殺されるよ!?」
といつも心配してくれる。
わたしはそう思い別れを告げたら、いままで以上に手を出され、身体中にいくつもの傷や跡があった。
別れたくても別れられないところまで来ていた。
ひとり暮らししている家に帰ろうと思っても身体が拒否反応を起こし、足が一歩も動かなかった。
それもそのはず、DVをしてくる彼がわたしのアパートに居座り、朝晩問わず抱いてくるのだ。
わたしは精神的にも肉体的にももう限界で、アパートに帰らず、実家に帰ろうかな…と思っているところに幼馴染である錆兎に会ったのだった。
「椿姫じゃないか、どうした?こんなところで」
錆兎はわたしを見ると片手を上げ、近づいて来た。
『さ…びと…』
わたしは幼馴染の錆兎を見た瞬間に、安心が上回ったのか、ただ緊張感が途切れたからなのか気を失った。
遠くの方で微かに聞こえる錆兎の声を聞きながら、本格的にわたしは意識を手放した。
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俺の顔を見た幼馴染の椿姫は急に気を失った。
少し前に見た椿姫と比べると、どこかやつれているように見えた。
その身体を抱きとめると、椿姫の身体は折れてしまいそうなほど痩せ細っていて、よく見ると化粧で隠れているが隈がある。
「どうして…」
さすがに人目が気になったため、俺は自分が住んでいるアパートに椿姫を連れて行くことにした。