第9章 水底に沈む❄︎【時透有一郎・無一郎】
♪〜♪〜
メッセージを知らせる着信音が鳴る。
携帯のディスプレイを見るとそこには有一郎くんの名前が表示された。
画面を開くとそこには
“これからそっちに行ってもいい?無一郎とふたりで”
と書いてあった。
わたしはすぐに返信する。
“いいよー。先生方は午前中にみんな帰ったの。いま、職員寮にはわたしひとりだから”
そう打ち込み送信ボタンを押す。
わたしはこの学校でもうすぐ3年、教師をしている。
この学校は生徒も教師も全寮制で、原則寮に住むことになっているのだ。
もう年末、担当しているクラスの生徒も年が明ければ卒業だ。
あっという間の2年と9ヶ月だったなぁと、思うと同時に、もう2年9ヶ月近く彼らと歪な形の恋人関係を続けている。
わたしの彼氏はふたりいるのだ。
時透有一郎くんと、弟の無一郎くん。
わたしがここに来て初めて受け持った生徒だった。
ふたりは同級生の中でも一段と大人びていた。
そんなある日、有一郎くんと無一郎くんに告白された。
有「俺、椿姫先生が好きなんだ」
無「僕、椿姫先生が好きなんだ」
と、2人同時に告白された。
わたしは最初は断ったが、彼らは熱心に口説くものだからわたしはそれを了承し付き合い始めた。
付き合い始めたら最後、わたしはいつの間にか彼らが好きになっていたのだ。
教師という立場でありながら、教え子を好きになり、身体の関係を持った。
ぼんやりと思い返していると、部屋のインターホンがなった。
防音対策がしっかりしているせいか、扉をノックするだけでは聞こえないため、インターホンを付けたらしい。
わたしは覗き穴を確認し、鍵を開け扉を開けた。
彼らはふたり並んで立っていた。
『いらっしゃい』
わたしは上がるように促すと、有一郎くんから中に入った。
有「お邪魔します」
無「お邪魔します」
礼儀正しくそう言うと、靴をそれぞれ並べ迷うことなくリビングへ進んだ。
彼らはダイニングテーブルに並んで座った。
わたしはキッチンで珈琲を3人分淹れると、テーブルへ持っていく。
わたしは彼らの向かい側に座るのだが、今日は有一郎くんの前に座った。
わたしたちのルールのひとつだ。