第8章 令和時代からこんにちは【伊黒小芭内】
話しているうちに、ばったんどったん聞こえ始める。
「…まったく、静かに出来ないんでしょうか」
しのぶさんは、ため息をつくと立ち上がり部屋を出ていく。
しばらくすると、しのぶさんが戻ってきた。
その後ろにもうひとり誰かがいる。
「雪柳、どうしてお前は…」
しのぶさんの後ろから姿を現した黒髪の人は、こちらに指を刺したまま固まっている。
『あらまぁ。こっちにも小芭内さんいるんですね』
わたしが、ふふふと笑いながら言うとその場にいた人が口を揃えて
「こっちにも?」
と言った。
『え?うん。義勇先生も悲鳴嶼先生、煉獄先生、不死川先生もいますよ。あとは…』
「ちょっとストップです!椿姫さん…じゃなかった、柚姫さん」
『あ、はい』
わたしはしのぶさんにストップをかけられる。
いま呆然としている小芭内さんをどうにかしようと、しのぶさんの提案により現実に戻すことにした。
『小芭内さーん?』
わたしは小芭内さんの目の前に手のひらをかざし、手を振ってみるが無反応だった。
『うーん…じゃぁー…』
わたしは小芭内さんの耳元に口を寄せると、小さな声で
『小芭内さん、好きですよ』
と言うと、顔を赤くした小芭内さんが後ずさる。
それを見た宇髄先生としのぶさんは、
「あらー」
「派手に羨ましいな!」
などと言っていた。
「雪柳っ!なにをするんだ!それに小芭内さんっ!?」
と、顔を赤くしたまま一気に捲し立てる。
『うん、小芭内さんでしょ?それとも、小芭内先生って呼んだ方が良いのかな?』
「先生…?俺はお前の師範で、お前は俺の継子だ!」
『え?師範?継子?なにを言ってるの?小芭内さんの見た目はほぼ変わらないのね。違うのは髪の毛を結んでたり、マスクをつけているくらいかな』
「え?ま、すく…?なんだそれは…」
『あー…口と鼻だけを覆う布…?』
「もしもーし、お話がズレてますよー」
しのぶさんが軌道修正のため、声をかける。
『あ、はい』
「えっと…話をまとめるので詳しくお願いしますね、柚姫さん」
わたしは、それにこくりと頷くとひとつひとつ確認を始めた。
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