第1章 公休日の前日〈主人公目線〉
明日は、久しぶりの公休日で、長野から、高校時代の男友達が上京する事になっている。
彼は、今年の秋に結婚を控えており、奥さんになる女性の為に婚約指輪を買いに来るのだ。
わたしは、予め、鳴子などにも相談して、都内の人気の宝石ショップをピックアップして、その男友達と見て回る事にしていた。
久しぶりに会う男友達だから、多少のオシャレもしたい。だから、今日は早く帰りたいのだ。
わたしは猛烈な勢いで仕事をこなしていた。
「ウーサちゃん、仕事お疲れ様」
捜査から帰った津軽さんにまた、激マズのお菓子を口に突っ込まれた。
「むぐっ!」
わたしは、激マズお菓子をコーヒーで飲み込むと津軽さんを睨んで言った。
「もう!津軽さん、いきなりわたしの口に激マズのお菓子突っ込まないで下さい!」
「ウサちゃんってホント味覚オンチだよね」
「いやいや、味覚オンチは、津軽さんだって思います!」
「そんなに顔真っ赤にして怒らないの。ウサギさんが、タコさんみたいになってるよ」
「津軽さん、わたし忙しいんです!」
「じゃあ、ウサちゃん、忙しそうだから、これもお願い」
!!!
わたしのデスクにどさっと、大量に積み上げられた書類にげっそりする。
まあ、何とか頑張れば、定時に帰れる筈!
(津軽さんに構ってる場合じゃあない!頑張ろう!)
津軽さんの視線を感じる。
津軽さんの視線を感じる。
津軽さんの視線を感じる。
津軽さんの視線を感じる。
津軽さんの視線を感じる。
駄目だ。
見たら駄目。
見たら駄目。
見たら駄目。
こういう時の津軽さんを見たら、絶対駄目ーーーーーーー!)
だいたい、両思いになって、ヒヤヒヤしてるわたしの気持ちなど、津軽さんはお構いなしに、わたしにちょっかいを掛けて来る。
「へー、仲良いねー。いつも」
って東雲さんに言われたり、
「クズが、津軽に懐いたもんだ」
とか、加賀さんに言われたり、
「瑠璃子さん 今日も津軽さんと仲良しですね」
とか、黒澤さんに言われたり、
津軽さんが、わたしにちょっかいをかける度に、
元の公安学校の教官達の突き刺さる様な視線など、津軽さんは、全く気にしてない。
寧ろ、ヒヤヒヤしてるわたしを見て楽しんでる嫌いがある。
LINEの着信音がした。
津軽さんからだ。
『ウサちゃん、今日定時に終わったらご飯行くよ』