第3章 ※貴方がほしいもの、私がほしいもの※
(巌勝様・・・)
激しかった行為を思い出してしまう。互いが互いを求めあった、蜜のように甘く濃密な行為を。
それだけで、再び胎内が重く疼いた。
(嫌だわ、私。何てふしだらな・・・)
あれだけ激しく交わった後だと言うのに、まだ足りないとでも言うのだろうか。己の浅ましさをひどく恥じたキリカは両手で顔を覆ってしまった。
「キリカ・・・?」
もじもじしながら黙り込んでしまったキリカに、黒死牟は訝しげな視線を向けた。囁くように名を呼ぶ。
「キリカ・・・?」
返事はない。もう一度、名を呼んだ。呼んで、キリカの顔を覗き込む。
「なっ、何でもありませんっ・・・」
不意に覗き込まれたキリカは上擦った声を上げると、逃げるように顔を背けた。
「お気になさらないでくださいっ・・・」
両手で覆ったまま、俯いてしまった。この状態で見つめられなどしたら、どうなってしまうか分からない。
(そうか・・・)
瞬時に全てを察した黒死牟は意地の悪い笑みを口元に浮かべた。キリカの肩に手を置くと、やや強引に視線を此方に向けさせた。
「どうした・・・?何が欲しいのか・・・、言わねば分からぬぞ・・・」
じっと見つめたまま、ことさらゆっくりと訊ねた。お前の考えている事などお見通しだと、言外に匂わせながら。
「それはっ・・・」
妖しく輝く六つ眼に全てを見透かされたような気分になり、キリカは全身を火照らせた。
「さあ・・・、言えば、好きなだけくれてやろう・・・。言わぬのなら・・・、そのままだ・・・」
囁きがキリカの耳朶を打つ。ぞくりと四肢が震えた。身体中が熱く火照っているのを感じる。
「言えば・・・、好きなだけくださるのですね?」
艶めいた囁き。くすり、と笑ったキリカが黒死牟を見つめる。この方が欲しい。そう思ったら自然と唇が言葉を紡いでいた。
「お前は・・・」
予想外の反応に、黒死牟が驚いたように目を見張った。
(驚いていらっしゃる・・・)
微笑みを浮かべたまま、キリカは黒死牟の顎に手を添えた。ゆっくりと口付ける。