第2章 ふつかめ
『と、言うわけなんだけど。どう思う?』
「どうもこうも何もまだ分からないわよ。」
私は次の日、紅の家に相談に来ていた。
去年産まれたミライちゃんはまだよちよちと掴まり立ちをしている。
めっちゃ可愛い。
『あっ、これミライちゃんにお土産ね。』
「おもちゃ?気を使わなくていいのに。」
『私の推しだから貢ぎたいの。』
「なにそれ?」
紅の入れてくれた熱いお茶にゆっくりと口をつける。
『なんかさ、カカシ怪しーし。紅はカカシとアスマくんと3人で仲良かったじゃん。だから何か分かるかなぁって。』
「私はあいつがアンタにベタ惚れだった事しか知らないわよ。と一緒の任務の前と後はデレデレして気持ち悪かった」
『なにその情報初耳なんですけど!』
紅は困ったように少し眉を下げて、寄ってきたミライちゃんを片手で抱く。
「気持ち悪かった事は言うなとも言われてないしね。これは憶測だけど、もうすぐの誕生日だから何考えてるんじゃない?」
『そうなのかなぁ…。』
「随分自信なさそうね。」
『無いよ。そりゃ最初は甘々だったけど、結婚も3年もしたらそうでも無くなるよ。今までは忙しいなりに話す時間も、喧嘩する度に価値観をすりあわせていくことも出来たよ。でも、それも今はないんだもん。』
「そう…。」
悲しそうな顔をしてたんだろうか。
紅から離れ、ミライちゃんは私の方に抱きついてきた。
『うぅっ…ミライちゃんぁぁん』
グリグリとミライちゃんのお腹に顔を押し付けるとパァァン!と良い音で頭を叩かれた。乳児の力思ったより強い。いやあの父親ゴリラの血か。
「。」
『うん?』
「私はもう、疑える相手も居ない。忍だから分かってると思うけど突然居なくなるのよ。疑ってもいい。でも、後悔しないやり方にしなさい。」
一瞬息が止まった。そうだ。あの日アスマくんは突然死んだんだ。
紅とお腹にいたミライちゃんを残して。
明日の話をして、次の未来の話をして。それでも前触れなしに居なくなってしまった。
泣き崩れた紅の、生きてるか死んでるか分からないような憔悴と嘆きを私は誰よりも近くで見ていた。
まだその傷は完璧に言えたわけじゃない。
戦が終わった。彼は火影になった。私は忍をやめた。
どこか当たり前のことを忘れていたのかもしれない。