第1章 いちにちめ
『ごっ、ご飯作るんだから!また今度ね!』
意外にもベリっと手を剥がすことに成功すると、
カカシはニコッとした。
「そ?じゃあ楽しみにしてる。」
そのままルンルンとカカシはテーブルに向かっていった。
いつもだったら、すぐがっついてくる癖になんだか妙に拍子抜けだ。
どこかモヤモヤグルグルする胸のままに切ったほうれん草を鍋に入れた。
◇◇◇◇
出来上がった品をテーブルに置いて向かい合うと、カカシはまだニコニコしている。
一体何が楽しいんだろうか。
そんな楽しい事は無いはずだ。
この間会ったシカマルくんが死にそうな顔して『激務…しぬ…テマリ…』
とか焦点あってない虚ろな目で言ってたし。
カカシもこんな早くに帰れたことは火影になって以来無い。
じとーっと見つめると、余計にニコニコする。不気味だ。
まさか…と可能性が頭をよぎる。
友達が先日家に遊びに来た時に言っていた。
『男はね、浮気してると妙にご機嫌なの。何も理由もないのにね。いつも遅いのに、たまに早く帰ってくるの!』
その時はそんな馬鹿な、そんなもんか?と思っていたがこの不気味さはもしかしたら当てはまるかもしれない。
いつもだったら帰ってきて抱きつくなんて無い。挨拶して素通りだ。たまに触られる事はあったとしてもだ。
確証もないし何も無いけど、どうにも女の勘っていうやつが不安を刺激する。
「んー!やっぱりの料理は最高だネ。」
『はいはいそーですね。』
そういう口の中には味を感じなくなっていた。