第2章 ふつかめ
「…」
『いや!帰りいつも遅いしさ、頑張ってるなーって。でもちょっと寂しいし、カカシなんか分からないけど楽しそうでなんでだろう…みたいな。』
「…ごめんネ。」
肩にカカシの顔が埋められる。
謝って欲しいわけじゃない。だって、誰より頑張ってる夫が、カカシが、私の自慢だ。
でもその言葉は口からは出ず、喉元にぐっと留まった。
「この間、仕事の合間に息抜きして来いって言われてシカマルに言われてさ。」
『うん。』
「と任務帰りによく夕日見てたでしょ。火影岩の上の山で。」
『あぁ、そんな事あったね。』
帰りにどこか寄らないかとよく言われてた。付き合う前の話だったと思う。
その頃はなんでカカシに誘われてるのかよく分からなくて、でも話が弾むので誘いに乗ってた。
飲みに行くのもあまり好きじゃなくて、時間が合えば高いところに昇って木の葉の里を見下ろしながら夕日を眺めるなんてこともあった。
「あそこでぼーっとしてたらさ、俺と最近話してないなぁと思って。結婚して当たり前になってたけど、可愛かったなぁ。あんなに好きで追いかけて結婚して、今その人が家で俺の帰り待ってるんだよなぁって思ってね。」
『…うん。』
視界がどんどんぼやけていく。
私、自分が感じてるよりもずっと寂しかったんだ。
「それで、なるべく早く帰れるように仕事終わらせて一緒にご飯食べて話して。…今日なんか特にが付き合いたての時みたいに接してくれるから可愛くて仕方なくてって…はぁーカッコ悪いネ」
耐えきれなくなった涙が零れてお湯に解けていく。
1つ、また1つと雫がとめどなく溢れ出た。
カカシも、覚えててくれたのだと胸が熱くなった。
2人で頑張ってたことも約束も。
私だけじゃなくて同じことを思ってくれてたんだと。
『カカシ。』
呼びかけて後ろをむくと、目じりを下げてこちらを見てくれる。
やっぱり私は、カカシが大好きだ。
『ありがとう。大好き。世界で一番カッコイイよ。』
目を細めて、愛おしそうに熱を灯した瞳に私が映る。
「俺の奥さんは世界一可愛いよ。…誰にも渡せないくらい。」
どちらからともなく唇を合わせた。