第17章 ペパーミントラブ
おだやかな昼下がり。ヒナギク博士の手伝いであるポケモンの生態調査を終えた私とNは、報告のために研究所に訪れていた。
「ウェルカム!ふたりとも調査は順調?」
「はい!今日は野生のポケモンは見つかりませんでしたが、ロケット団からポケモンを保護してトレーナーに返しました」
プラズマ団とロケット団の一件以来、しばらくは大きな騒ぎは無かったけれど、最近またロケット団の動きが活発になってきている気がする。街中で目立った悪行がチラホラ目撃されるようになり、パシオでは国際警察の指示を受け、警備を強化しているそうだ。
「それはお手柄だったわね。お茶淹れるからふたりとも休んでいって」
応接用の椅子に案内されて座る。ほどなく、ティーセットを載せたトレイを抱えて博士が姿を見せた。露店で見つけた流行りのミアレガレットをお土産に渡すと、紅茶にぴったりだと喜んでくれた。
博士が目の前でお茶を淹れると、ティーポットの口からふわりと紅茶の香りが立ちのぼる。華やかな香りを吸い込んで思わずうっとりする。
「お土産のガレットもみんなで食べましょう」
「はい!用意しますね」
湯気の向こうでは深紅の紅茶が揺れている。やさしい香りに包まれながらミアレガレットをお皿に並べていると、博士の足元に小さな影がひとつ見えた。