第2章 Ever green!①
舞台は砂浜。
白い砂が衝撃派と共に風に舞う。
「なんだぁ今の攻撃は!隙だらけだったぞ!」
へたり込む私の前で、彼は得意げに腕を組んだ。
「まいりました…」
力尽きた相棒のサンダースを抱き起こし傷を治療する。
「無理させちゃったね。ごめん、はいこれ」
おやつにきのみをあげると、元気を取り戻したサンダースは嬉しそうにかぶりついた。
グリーンはその横で、戦いで傷んだカメックスの甲羅を磨いている。
でんきとみず。本来ならば私の方が有利なはずなのに。
「どうして負けちゃったんだろう」
「まっ、オレ様は世界最強だからな。弱点なんて気にせず力でねじ伏せる!」
「なにそれ!」
悔しくて口を固く結ぶと、軽快な笑い声が返ってきた。
「まぁそれは冗談だけどよ。オレのカメックスは耐久力を意識して鍛えてんだ。耐えて耐えて耐え抜いて、相手に隙ができた時に一撃必殺をくらわせる。それがオレとコイツの戦略だ」
言葉にするのは容易いけれど、そうなるまで一体グリーンとカメックスはどれくらい鍛錬を積み重ね、戦ってきたのだろう。
カメックスはグリーンからきのみを貰うと、ごきげんな様子でサンダースと並んで食べ始めた。
ゴツい見た目とは対照的な可愛らしい一面に、思わず笑みがこぼれる。
チラリとグリーンに視線を向けると、カメックスを見つめるその表情はとても優しかった。
「このカメックス、オーキド博士の?」
「ああ、ゼニガメから育ててずっと一緒に戦ってる」
「そっか。懐かしいなぁ」
私は2歳下だけど、グリーンとは幼なじみの関係だ。
無口だけど情熱的なレッド、優しくて姉のように慕ったリーフ、プライドが高いけど頼りになるグリーン。
3人と過ごす時間はとても楽しくて、毎日があっという間だった。
兄妹のように懐いていた私は、3人が旅立つ日大泣きした。
その背中を追いかけてマサラタウンを飛び出し、1人で旅を続け、こうしてまたみんなと、グリーンとこの島で会えた。
あの頃のように一緒に過ごせるようになり、パシオでの日々は毎日が夢のようだった。