第12章 ※熱帯夜
蒸し暑い部屋、エアコンの音が五月蝿い。
崩れた髪、乱れた浴衣、湿り気のある声。
「ねぇ、どうして…」
どうしてもこうしてもない。
放し飼いしてやれば、調子に乗ってあっちこっちフラフラしやがって。
一度、自分が誰のものなのかわからせる必要があるらしい。
寝具に沈む首筋に唇を付けて、赤い跡を残す。
「やだ…そこ、見えちゃうよ…」
返事の代わりに鼻で笑ってみせる。
隠さなくていい。あいつに見せつければいい。
全てを話さないから悪い方へ妄想が膨らむ。
あの時シルバーとなにをしていた?オレに言えないようなこと?
気にいらない。ナナがオレに隠し事するなんて。
浴衣の襟を押し下げて、露わになった鎖骨に沿って舌を這わせれば、眉根を寄せて声を押し殺している。
「グリーン……怒ってるの?」
怒ってる?オレが?笑わせんな。
あれぐらいで怒るわけないだろ。
ただ刻みつけたいだけだ。
お前はオレのものだって。
「怒ってねーよ」
可憐に咲いた花弁を散らすように、着飾った浴衣を淫らに崩していく。