第3章 Ever green!②
「まぁ、泣かせたのは素直に謝る。オレのピジョットは世界最速だからな。まだお前には早かったな」
「ええと、あれに関してはたぶん一生慣れることはないから安全運転にして」
「相変わらずおくびょうだな」
そう言いながらも声が優しい。
「あの急降下はほんとにやめて!」
「わかったって」
本当にわかっているのだろうかと、訝しげにつり目がちな大きな瞳をじっと見つめると、グリーンは眉根を寄せ、困ったように微笑んだ。
「さっきからお前さ、大会中にそんな顔すんなよ」
「そんな顔って?」
「グリーン様に夢中な顔」
平然とオレ様発言を言ってのけた彼は、固まる私の耳元に顔を寄せ、そっと耳打ちした。
「全部終わったら覚悟しとけよ?」
そう言い放ち、甘い時間を終わらせた。
「行くか」
ポケットに手を入れ、何食わぬ顔で洞窟へ向かい歩き出す。
一方の私はというと、当然平気なわけはなく、全身の関節がなくなったみたいにへにゃりと地面に尻餅をついた。
「あの、こ、腰が抜けたっ」
「なにやってんだっ!」
振り返り、ゲラゲラ笑っている。
「ボサッとしてると置いてくぞ!」
私を呼ぶ声が洞窟の中を反響して響き渡る。
「待って…今ようやく足の感覚が…ねぇ待ってぇ!」
鳴り止まない胸の鼓動をひた隠し、深呼吸をして試練が待つ洞窟へと第一歩を踏みしめた。