第10章 親子のカタチ
「オーダイル!かみくだく!」
「動きが甘い、指示が遅い!」
先制はやはりミュウツーに取られてしまった。
ミュウツーは出だしからサイコキネシスで確実にダメージを与えてくる。
だがオーダイルだってやられっぱなしじゃない。ダメージを負いながらも前に進み、強靭なアゴでミュウツーの細い腹部に噛みついた。さすがのミュウツーにもこれは効いたようで、テレポートして距離を置く。
テレポートは瞬時に姿を消すが、移動して姿を現した瞬間にタイムラグのようなものが生じ、ほんの一瞬隙ができる。
そのタイミングを見計らい、ミュウツーのシルエットが浮かび上がりかけた場所へハイドロポンプを繰り出す。だが、ミュウツーがわずかに姿を見せたのはフェイントで、背後を取られてしまった。
「終わりだ」
「しま…った!?」
「シルバー!」
間一髪、ルギアがミュウツーの横からエアロブラストを放ち、ミュウツーがテレポートで消えて距離を取る。
幹部との戦いは既に終わり、ヒビキと他のヤツらもオレの元へ駆けつけていた。
ヒビキはオレと目が合うと、申し訳なさそうに眉をひそめる。
「勝手にごめん。でも、どうしても力になりたくて…」
「……助かった」
「え?」
「オレひとりではやられていた」
オレがそう伝えたら、ヒビキが嬉しそうにしやがるから、苛立ちを隠しきれず目を逸らす。
「フッ、偉そうな口をきくくせに、結局お前もひとりでは何もできないじゃないか」
オヤジの挑発を冷静に受け止める。
たしかにその通りだ。けど——
「今は自分のプライドより、Nとパシオを守ることの方が大切だ!」
「そうか…」
オヤジはポケットに手を入れると、何か思案するようにゆっくりと目を閉じた。
「…アポロ!」
「ハッ!」
アポロがすぐさまオヤジの元へ駆け寄り跪く。