第10章 親子のカタチ
翌日、目撃情報を頼りに3人でゲーチスの捜索を開始した。
シルバーくんは洞窟を、私とNさんは洞窟のすぐ側にある広大な森の中を調査している。
「朝から付き合わせてしまってすまない。毎朝グリーンとトレーニングしてるって言ってたけどよかったのかい?」
「大丈夫です!いつもより早起きして朝練してきましたから!」
正確には、グリーンにわけを話して、今日のトレーニングは休むと言ったら1時間前に叩き起こされたんだけど、それは言わないでおく。
一方、グリーンはと言うと、ゲーチスとロケット団の動向についてワタルさん、ライヤーさんたちと話し合うため、トレーニング後すぐにライヤーさんの屋敷に向かって行った。
「調査のために早起きしてくれたんだね。実は、あれから少し後悔していたんだ。キミたちを巻き込むべきではなかったんじゃないかと」
「いえ、きっと何も言われなくても手伝ってましたから。ヒナギク博士にも、今日は研究の手伝いは休みでいいと言われましたし」
今朝電話で話した時、ヒナギク博士に頼まれたことがある。
『私はジムリーダーのみんなが交代で護衛をしてくれることになったから、あなたはNと一緒にいてあげて。彼とゲーチスの接触が1番の危険因子なの。またゲーチスがNを利用しようとするかもしれないから』
電話口で博士はそう言っていた。
Nさんの話を聞いてから、プラズマ団が起こした事件を改めて調べてみた。ポケモンを人から解放しようとしたNさん、ポケモンと人を分断して自分だけがポケモンを支配しようと企んだゲーチス、一見似ているようで根本の思想はまるで違う。
Nさんはゲーチスにより、虐げられたポケモンを幼少期から見せられ、意図的に人を憎むよう刷り込まれていったんだ。心優しい純粋なNさんを利用しようとした、プラズマ団の幹部、ゲーチス。
考えるだけで静かな憎悪が湧き起こる。