第9章 ※チームメイト
「もしもしグリーン!聞いて!予選突破したよ!」
つい嬉しくて用件を聞く前に報告してしまった。
「おぅ、よかったな!たくさん褒めてやりたいところだけどよ、ちと緊急事態が起きて連絡したんだ」
「緊急事態って?」
「実はな——」
グリーンが出した名前をにわかには信じられず、思わず聞き返してしまった。
「パシオに…ゲーチス…が?」
シルバーくんが驚いた表情で振り返る。
「あの人が…?」
Nさんが震える声で小さくうめく。そして帽子を目深に被り、考え込むように押し黙った。
「見間違いじゃなく本当に?」
「ああ、目撃情報が何件も入ってるらしい。ロケット団と直接的な繋がりがあるかはまだわからねーけど、Nもいるし警戒しておいてくれ。いいか?危険だから絶対ひとりにはなるなよ!」
「うん、気をつける」
グリーンとの通話を終えると、間髪入れずにNさんが話しかけてきた。
「キミ!パシオにゲーチスが来ているというのは本当かい?」
「はい、目撃情報がいくつもあったみたいで、既に複数のトレーナーが調査にあたっているみたいです」
「ならボクが、あの人が何かしでかす前に悪事を阻止する!ナナ、シルバー、ゲーチスを探すのを手伝ってくれないか?」
「ああ」
「もちろんです!」
パシオで何かが大きく動き出している気配を感じる。
逃れようのない大きな運命の波が、唸りをあげて私たちを飲み込もうとするような、そんなおぞましい感覚に襲われながら、今、目の前で自分にできることをしよう、そう自身に言い聞かせ、拳を握り締めた。