第8章 でこぼこトリオ結成
グリーンは夕方にライヤーさんの屋敷に呼ばれているらしく、時間ギリギリまで私たちに特訓をつけてくれてから、ピジョットに乗って急いで飛び立っていった。
残った私は、シルバーくんと一緒に山でポケモン調査を続けている。木々や絡まるツタをかき分けながら、少しずつ奥へと進んでいく。
登山客や修行中のトレーナーの姿はまばらになり、空はゆっくりと夕闇に染まり始めていた。
それなのに、ポケモンの気配はまるでない。
「調査に付き合わせちゃってごめんね」
「フン、グリーンに借りを返すのにちょうど良い」
私ひとりでは危険だからとグリーンがお願いして、調査の手伝いを引き受けてくれたシルバーくん。さっきはついムキになって言い争っちゃったけれど、お世話になりっぱなしで頭が上がらない。
「そろそろ夜になる。切り上げるぞ」
「そうだね」
ポリゴンフォンのメモ機能に、日付と調査した時間帯に加え、“山エリアは野生・迷子ポケモンなし”と打ち込んでいると、不意に下草からガサガサと音がした。
姿を見せずに忍び寄る、生き物のただならぬ気配を感じる。
「し、しるばーくんっ、いる、そこっ」
「静かにしろ。声で逃げるだろ」
シルバーくんに制され、声をゴクリと飲み込んだ。音はどんどん近づいてくる。
「チョケ…」
「ちょけ?」
弱々しい鳴き声。草の中から現れたのはトゲピーだった。トゲピーは怪我でもしているのか苦しそうだ。
「いた…ポケモン」
シルバーくんを見やると、既に捕獲の準備をしてボールを持っている。
と——次の瞬間、シルバーくんが私の腕を勢いよく掴んだ。
「離れるぞ!」
「え?」
思考が追いつかないまま、腕を引かれ反射的に地面を蹴る。地響きがしたかと思うと急に夜が訪れた。
「チョッキィプルイィィィ!!」
夜の正体は、ダイマックスしたトゲピーの巨大な影だった。