第7章 ※なつき度MAX
腕の中、ナナは肩を震わせる。戸惑いを隠しきれない上目遣いがオレの理性を揺さぶってくるが、今夜はそんなことのために部屋へ呼んだんじゃない。
「また逃げようとしたな?」
「…だって、私、変なこと言ったし…一緒にいると、きっとまた…」
モゴモゴとまた面倒なことをつぶやいている。自責と他責なんて言葉があるが、こいつはいつも前者ばかり。せっかく最強なオレ様が彼氏なんだから、もう少しオレを頼る癖をつけた方がいい。
「そうやってひとりで全部抱え込むの、そろそろやめねぇか?」
襲撃の話を聞いた時、オレの思考を支配したのは怒りや焦りよりも「自分がナナを守れなかったこと」に対する強い後悔だった。
「お前が襲われたって聞いた時、気が気じゃなかった。冷静を装って自分を抑えるの大変だったんだぜ」
ナナは少し驚いたように目を開く。そんなナナをさらに強く抱きしめた。
ナナには言ってなかったが、今、パシオでは第2回WPMのタイミングに被せて、ロケット団が本格的に動き出したという情報が入っている。オレといるだけでヤツらもマークしているだろうし、そろそろちゃんと話す頃合いだろう。
「ナナがパシオに来る前、ヒナギク博士が攫われる事件が起きたんだ。研究データが目的だったらしい。すぐに救出したから博士は無事だったけどな」
「それももしかしてブレイク団がやったの?」
「あいつらはそんな大それたことできない。ロケット団のしわざだ」
ナナは恐れと驚愕で顔を引き攣らせた。
「何が目的か知らねーが、そのせいでWPM開催自体危ぶまれている状況だ。オレとレッドは、ヒナギク博士の依頼で、ブレイク団とロケット団の捜査もしている最中だった」
怖がらせたくなかったし、関わらせたくなかった。詳細を話せば、きっと手伝いたいと言うに違いない。だから内緒にしていた。
それなのに、少し油断した隙に、ナナ本人が襲われた。そんな詰めの甘い自分が何よりも許せなかった。