第5章 私は忘れられなかった話。
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「………ご馳走様でした。」
「………うーん、そのお皿だけ頑張ろう?」
そんな彼も夕食は一緒に取ってくれる。今日は悲鳴嶼さんが任務で留守なので2人きりなのだが、ココ最近玄弥君の食は細くなるばかり。
「…自分で食べないなら食べさせてあげようか?」
心配を含んだ私の揶揄いに、玄弥君は顔を赤くして癇癪の様な叫び声を上げた。
「く、食えば良いんだろっ!!食うよっ!!!」
「ちょっ!!そんなに掻き込んだらっっ!!」
阿呆のように無理くりご飯をかきこんだ玄弥君は私の予想通り真っ青になって口を抑えた。
「…………う”っ。」
「ほらぁ、言わんこっちゃない。桶持ってくるからそれまでは我慢してよ?」
__コクコク。と何とか頷いた姿に溜息をつきつつ桶を持ってきて手渡すと直ぐそこに吐き出した玄弥君は背を丸め真底申し訳なさそうに謝罪をした。
「…………ごめん。」
「仕方ないよ、気にしてない。」
そもそも食欲が無い彼に無理に食べさせようとしたのは私だ。玄弥君を攻める必要なんてこれっぽっちも無い。
そんな事を思って背を擦ると、まるでそれを嫌がるかのように玄弥君は桶を持って立ち上がった。