第2章 私が貴方を好きになる迄の話。
「実弥さんこしあんとつぶあんどっち派かな?」
「玄弥君はどちらなんですか?」
「つぶあんだって。いいや、両方買ってこう。」
こうやって確認したら私達はいつも通り。
普通に話してまた足並みを揃えて歩き始める。
「楽しかったねぇ。」
「ええ、良い息抜きが出来ました。」
そんな楽しかった帰り道。
私はそっと1歩引いてしのぶの後ろ姿を見つめた。
「(こんな日が毎日続けば良いのに。)」
可愛らしい蝶の飾りが愛おしく思えて、
ちらっと見える日輪刀が何故だかやたらと
憎たらしく思えたから、
私は距離を詰めてしのぶの背にそっと抱きついた。
「しーのぶっ。(…また、痩せたなぁ。)」
「はいはい、私はココに居ますよ。」
__トントン。と私の腕を叩くては、
小さくて可愛らしいのに、
傷だらけでほんの少し荒れていた。
「……今度はさ、着物を着て行かない?」
「そうですねぇ、機会があればそうしましょう。」
口先の約束をしてから
私は、いつも通りの一言をしのぶに送る。
「またね。」
それにしのぶは茶化す様な声で
いつも通りの一言を私に返す。
「さようなら。」
それに私はふくれっ面をしてしのぶが笑う。
「しのぶ!!またねっ!!!!」
「ふふっ。はいはい、また会いましょうね。」
コレが、私達のお別れの挨拶なんだ。
「(…きっと、着物で甘味処はいけない。)」
先程した口先だけの約束はきっと叶わない。
こういうお出かけも、
お互いいつ任務があるか分からないと
隊服で日輪刀を持っていく。
だから手ぶらで可愛い着物を着て甘味処なんて叶わない。
お互いそういう性格だから尚更叶わないだろう。
「(…またね。がこんなに寂しいんだから。)」
なんでこんな当たり前の言葉が特別なのか。
そんな事を考えながら、
私は【しのぶに会った後に必ず向かう場所】へ
いつも通り足を進めた。