第1章 俺が彼女を好きになる迄の話。
□決定打
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そんな日の夕食。悲鳴嶼さんはあのまま任務へ向かい、兄ちゃんは一刻ほどで帰っていったのでと2人きりだった。
「…やっぱり、あんまり食べらんない?」
「…ごめん…もう食いたくねぇ。」
どうしても食欲が湧かない。何とかひとしきり箸はつけてみたのだが全く食が進まない俺にはニッコリと微笑んでから小さな皿を差し出した。
「じゃあ、…コレは?」
「あ、コレ…。兄ちゃんの……。」
「ふっふふっ、やっぱり見てたんだ。」
小さな水まんじゅう。他の物よりも水分が多いコレは喉の通りが良くて食欲が無くても食べやすい。
「…兄ちゃんも、気づいてんのかな?」
毎度あのやり取りを俺が見ている事を兄ちゃんは気づいているのだろうか。が分かっているのならその可能性もあるだろうと、問いかけるとは目を細めて愛おしそうに呟いた。